マーケティング理論を用いて賃貸物件を満室経営する

マーケティング戦略

マーケティングを一言でいうと、「営業を必要としないで必ず売れる商品を作る」ということです。

つまり大家で言えば、募集をかければすぐに入居が決まる物件を作るということですね。

そんな夢のような話があるんでしょうか。

ちょっと信じられませんね。どうすればいいのでしょうか?

よく取られるやり方として、(言葉は悪いですが、あまり頭を使わないやり方として、)入居を決めるには家賃をどんどん下げていけばいつかは入居が決まるかもしれません。

でも、いつか、もうこれ以上下げられないという限界は来ます。

さらに、このようなサービスの提供は、大家にも入居者にも不利益になります。

「いやいや、家賃は安いほうが入居者は喜ぶに決まってるよ!」

と思う人は多いでしょうね。。

しかし、永続的に良いサービスを提供するには三方良しの関係、もしくは最低でもWIN-WINの関係が必要です。しかしながら、よいサービスを提供するための資本金が家賃を下げ過ぎることで小さくなります。または無くなってしまいます。大家は良いサービスを提供するだけの資金を市場から得られず、どこかで破綻します。

すると、サービスが受けたくても受けられないというふうに結局は入居者も困ってしまうことになります。

それでは、家賃を下げる以外にすぐに入居者を決めるにはどんなことができるのでしょうか?

その答えは今回勉強するマーケティングにあります。

不動産投資をすでに行っている人にはこれからの空室対策のヒントがあり、これから不動産投資を始める人にとっては、どの様な物件を購入すればよいのかというヒントになります。

バリュープロモーション

先に答えを言いますと、ここで紹介する商品の開発においては、マーケティング思考という考え方を使って商品やサービスを考えます。その対称的なものがプロダクト思考です。

マーケティング思考はお客様目線で商品や売り方を考えるということです。これをバリュー・プロモーションと呼びます。それに対し、プロダクト思考は自分の商品をどう売るかという既存の商品ありきで考えることを言います。

バリュー・プロモーションとは英語が由来ですが、どういう意味かというと、

バリュー(Value=価値)・プロモーション(Promotion=助長、振興、奨励、販売促進)です。

では、マーケティング思考(お客様目線)で考えるとは、どのように考えていけばいいのでしょうか。それには次の5つのステップがあります。

  1. 3C分析
  2. STP分析
  3. 4P分析
  4. SIPS分析
  5. SWOT分析とクロスSWOT分析

英語っぽいものや記号がたくさん出てきて、なんだか訳がわからないですよね。

大丈夫です。

私も初めはそうでした、今回はこれらの中でも3C分析とSTP分析について、具体例を交えながら一つずつ丁寧に見ていきます。ご安心ください^^

3C分析

ここでいう3Cとは、次の3つのことを指します。

  • Company:自社  =物件
  • Customer:顧客  =入居者
  • Competitor:他社  =周辺の物件

この3つはマーケティングを考える基本の軸となります。

この自社、顧客、他社の関係を図にすると、こんな感じになります。

この色を付けた部分、これがバリュープロモーションです。

それぞれの円は、

  • 自社が提供できること。
  • 顧客が求めること。
  • 他社が提供できること。

を表しています。

自分の物件で提供できるサービスがあり、そのサービスを入居者がほしいと思い、他にそのサービスを提供できる物件が周りにないとしたら、その物件は熱烈に求められます。

考えるには順番があり、自社ー>顧客ー>他社の順に考えていきます。

大家目線で置き換えれば

自社:自分の物件が提供できることはなにか?

顧客:入居者が求めることはなにか?

他社:周辺の物件が提供できることはなにか?

となります。

入居者が本当に求めることは何でしょうか?次の段階ではそこを掘り下げていきたいと思います。

STP分析

分析

それでは、入居者が本当に求めていることとは、どんなことでしょうか。想像を膨らませて考えてみましょう。

誰にどのようなサービスや製品を提供していくのか?これらのことを考えるときに使われるのがSTP分析です。STPはそれぞれ次のことを表します。

  • セグメンテーション(Segmentation)・・・市場を俯瞰。鳥になった気分で社会全体を上から俯瞰する。
  • ターゲティング(Targeting)・・・理想のお客様像を決定
  • ポジショニング(Positioning)・・・自社の立ち位置を確定

STP分析とは一言でいうと、

市場を俯瞰(ふかん)し、ターゲットを絞り、商品(サービス)の立ち位置を決める。

ということです。

セグメンテーション(Segmentation)

まずは、入居の候補者にはどんな人がいるのかを考えます。

不動産の入居者として、一般には老若男女、年齢、家族構成、趣味・嗜好により様々な入居者が考えられますが、まずは性別、年代、職業、エリアで考えてみます。

  1. 性別:男性なのか女性なのか?ファミリーなのか?それとも2人暮らしのカップル?
  2. 年代:一人暮らしを始めたばかりの学生?学校を卒業し、就職したばかりの20歳前後?少し経済的に余裕が出てきた30代から50代?退職間近または退職後のシニア世代?など。
  3. 職業:学生?サラリーマン?OL?自営業者?退職して年金暮らし?生活保護受給者?
  4. エリア:繁華街?学園都市?工業地帯?住宅街?駅から遠い?駅から近い?

これらの情報を自分の物件に照らし合わせて考えます。

ここで、具体的に私の物件をSTP分析した結果は次のとおりです。

STP Analysis

駅から遠い物件なので、電車利用の入居者が入る可能性は低いです。

また、近くに大学などが無いので、学生は対象になりません。その代わり、近くには埠頭(ふとう)が有りその周りには自動車関連の工場や会社がありますので、それらのサラリーマンの需要が見込めます。

閑静な住宅街が魅力ですが、病院が近くに無いので、シニア世代にはあまり受けが良くないかもしれません。

3LDKですので、無理ではないですが女性が一人で住むには広すぎます。

スーパーや学校が近いので、ファミリー層にも需要がありそうです。(というより、私はそこをあてにしてこの立地で戸建てを買いました^^)

裏庭が広いので、ペットを飼育したり、家庭菜園をしたりして休暇の時間が充実します。

(備考)

上の表は喫茶店をモデルにしたセグメンテーションを参考にしたので、実際には不動産投資に合ったもっといいセグメンテーションが出来るかもしれません。それは今後の課題としたいと思います。

ターゲティング(Targeting)

ターゲットを決めるときには、具体的にその人の顔が目に浮かぶくらいまで絞り込むといいとされています。先程のセグメンテーションで浮かび上がってきた入居者像をさらにターゲティングで絞り込みます。

ターゲティングをするときには次のことを考えます。

  • 性別
  • 年齢(年代ではない)
  • 家族構成
  • パートナーの有無
  • 職業・勤務先
  • 月収、年収はいくらか?
  • 趣味はなにか?
  • 定期的に読んでいる好きな雑誌は?
  • 休みの日は誰とどこで何をしている?
  • よく使うSNSは何か?(Facebook, LINE, Twitter, Instagram etc)
  • 洋服はどこで買うか?
  • 一番お金をかけるものは何か?
  • 一番時間を掛けるものは何か?
  • 一日のタイムスケジュールは?

上記のような視点で考えた場合、私の場合のターゲットは次のようになりました。

「地元の中堅企業に務めるパートナーが居る男性または、2人の子供がいるファミリー4人家族で、服はユニクロで購入し、普段は自炊しているけれど、週に1回位は外食をして、休みの日には趣味の釣りに出かける。

車に対して大きなこだわりがなく、車は地方の移動手段として一般的な軽自動車を所有している。

一番お金をかけるのは趣味の釣り道具。

奥さんは子供の世話の合間に、裏庭の家庭菜園で野菜を作ったり、花壇をつくって楽しむ。家族の健康を気遣い家庭菜園で取れた季節の野菜を使った料理を家族に食べさせるのが喜び。

子どもたちが小さいうちは裏庭で砂遊びをしたり、敷地内でキャンプごっこをしたりして過ごす。」

とこんな感じです。

私の物件はファミリーまたはこれから家族が増えるであろう若いカップルに住んでもらいたいと思っています。

そのために、内装と間取りをなるべく明るい雰囲気に変えました。内装は白を基調とし、壁天井のクロスはもちろん白、窓枠も白、床材も白い木目調のフロアタイルとしました。間取りはキッチンが北側に位置しており、若干暗いので、南側に位置するリビングからの太陽光を取り入れやすくする意味も含めて4DKから3LDKに変更しました。

(間取りの変更DIYはこちらです)

ポジショニング(Positioning)

自分の物件の立ち位置(ポジショニング)を考えます。

ポジショニングは軸で決まります。自社の商品・サービスを縦と横の軸の中に位置付けて、他社との違いをわかりやすく表現することをポジショニングといいます。その図をポジショニングマップと言います。

自社が提供する価値をわかりやすく魅力的に伝えるポジショニングマップをつくることができると、ターゲットの顧客層にも明確にメッセージを伝えることができます。

商品によって、何を売りにしたいかによって、軸が変わってきます。この軸はいつも同じではないので、軸を何で表すかが難しいです。

食べ物を例に具体例を示しますと下図のようになります。

ポジショニング食べ物の例(単純)

この例は食べ物を商品として考えた場合の単純な例です。これでは商品の魅力がほとんど伝わらないですね。

そこで、この食べ物の機能として、「ダイエット効果大」、「健康増進」などを加えてみます。

ポジショニング食べ物の例(商品の特色を表す)

このように軸を変更することで、ポジショニングにおいて競合他社の製品に対する自社製品の特色がはっきりと表すことが出来るようになります。

これはまさしく戦略になり、企業で言うと社長の仕事になります。

一方、個人事業主である大家は戦略も戦術もそのほとんど自分で考えなくてはならないので、大変でもあり、やりがいのあるところです。

不動産の場合、立地を変えることは出来ないので、それ以外で他社との差別化を行いポジショニングをして物件の特色を出す必要があります。

現在、人気の設備としては、ダントツでWi-Fi設備です。高速インターネットを整備してあって月額3,000円までの負担ならば、許容してくれる店子さんは多いようです。

個人で光回線を手配した場合、月5,000円前後はかかりますから、入居者さんは3,000円で高速インターネットが使い放題になると喜んでくれます。

アパートのWi-Fi導入を検討される方は、より詳細に具体的な情報が載っていますので、JOJOさんの「あそぶろ不動産」のブログ記事を検索してみてください。

このような入居者に求められる機能を物件に加えることは他の物件と差別化出来た良いポジショニングになります。

その他の分析

3C分析、STP分析の他に4P分析、SIPS分析、SWOT分析とクロスSWOT分析がありますが、それらについては、また次の機会に解説したいと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。不動産業界は今でもFAXを多用しているような業界で、IT技術の活用もあまり進んでいません。

ということは、特に昔ながらの田舎の大家さんの多くはマーケティング理論を使っている人はほとんど居ないのではないでしょうか。

そのために空室の多い地域の大家さんは、空室を埋める目的で家賃をどんどん下げる価格競争に入っていると思われます。

ちなみに、私の物件がある西日本のとある田舎町ではその傾向が顕著です。一戸建てが3万円代で貸し出されています。関東地方ならば、ワンルームを見つけるのも難しい価格帯です。

しかし、自らが今回のようなマーケティング理論を勉強し、考えて行動することで、よりよいサービスを提供できるようになれば、有効な空室対策になるはずです。

お互いに頑張りましょう!

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

それでは、また。

参考文献:弱者でも勝てるモノの売り方 お金をかけずに売上を上げるマーケティング入門 上杉恵理子 著

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